たった5cmの歩幅革命
2019-09-07
週刊ポストには「医心伝身」というコラム欄があります。2019年9月6日号の同コラムのタイトルは「歩幅の狭い人は要注意!認知症発症リスクとの関係」でした。
国内の認知症患者は予備軍といわれる軽度認知障害(MCI)を含めると約862万人だと推計されています。
認知症患者の約6割を占めるアルツハイマー型認知症は脳細胞が正常な状態から、20年以上かけて徐々に進行し、MCIを経て発症するといわれています。
MCIであれば発症を遅らせたり、正常な状態に戻ることがわかっているので、より早い段階で気づき、生活習慣を改善していくことが不可欠です。
認知症の診断には認知機能テストの他、CTやMRIの画像診断が用いられる場合がありますが、認知症の症状のないときに、これらの検査を実施することは難しいのが現実です。
そこで認知症になりやすい状態かどうか気づくサインとして注目されているのが歩幅だそうです。
『たった5センチ歩幅を広げるだけで「元気に長生き」できる!』の著者で、国立環境研究所の谷口優主任研究員は、こういっています。
「高齢者の身体機能を測る代表的な指標として握力、片足立ちバランス、歩く速さの3つがあります。特に歩く速さが高齢者の健康指標に大きく係わるという論文が世界で数多く発表されています。
歩く速さは歩調と歩幅の掛け算ですが、私は高齢者にとって、どちらが将来の健康状態に影響しているかに興味を持ち、調査を始めました。結果、認知機能低下に関して歩調よりも、歩幅の狭さが関係していることがわかったのです」。
調査は新潟県と群馬県の65歳以上の住民約1000人を対象に実施された調査で、最長4年間追跡できた666人について調べたところ、歩幅の狭い人は広い人に比べ、認知機能が低下するリスクが実に3・39倍になっていたそうです。
「歩幅は脳の神経メカニズムと深く係わっています。例えば、パーキンソン病患者は動作が緩慢になり、歩行が不安定になります。それは脳の黒質と呼ばれる場所に変化が起き、歩行にまで変化が表われるからです。
歩幅を一定に広く保つためには脳の様々な領域を駆使する必要があります。つまり、脳のある領域に何らかの変化が生じると歩幅を広く保つことが難しくなる。歩幅の変化は脳のわずかな病変をも如実に表わしているのです」と谷口優主任研究員は解説しています。
わずか数cmの歩幅の変化が、人生を大きく変える一歩となります。
配信 Willmake143
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