幸福寿命
2018-03-21
「幸福寿命〜ホルモンと腸内細菌が導く100年人生」 という朝日新書が2018年3月30日に出版されました。著者は、メタボリックドミノという言葉を提唱した慶應義塾大学医学部内科学教授の伊藤裕先生です。
本のはじめに伊藤先生は、こう書かれていました。 「死なないでいられる期間が平均寿命であり、これは「生命寿命」とも言い換えられます。
私たちはただ単に生命寿命が延びればいいと思っているわけではありません。みんな、あくまで 「元気で長生きしたい」 「他人の面倒にならずに長生きしたい」 ことを望んでいるはずです。
健康寿命こそが、私たちの願いです。ただ単に生きているのではなく、健康に生きたいと願うのは当然のことです。それでは、果たして、健康であれば、私たちは 「幸せ」 なのでしょうか?
健康長寿国として名を馳せる我が国ですが、幸福度調査では、世界ランキング51位と低迷しています。また自殺率も先進国のなかで決して低くありません。
健康であっても幸せでないと感じている人はたくさんおられます。突き詰めてみると、私たちの究極の願いは、「死ぬまでずっと幸せでいたい」 ではないでしょうか?
私はこの 「幸せを感じていられる期間」 を「幸福寿命」と定義したいと思います。「幸福寿命」を出来る限り伸ばすことこそが万人の偽りない願いだと思います。
100年人生時代を迎え、私たちは改めて、「幸福」とは何かを考えるときに来ています。
私は大学医学部内科学教室に籍を置く医療人として、平均寿命(生命寿命)と健康寿命とのギャップがもたらす生々しい現実に遭遇しています。
この本で私は、私たちみんなが1日でも長い 「幸福寿命」 を享受できるための戦略を、生命学(ヒューマンバイオロジー)の立場から科学的、医学的に考え、そして皆さんに提供したいと思います。
そして本の最後はこう結ばれています。「超高齢化社会」を迎え、人生の終末への在り方は大きな課題です。この課題を考える時、私は、「腐る」と「枯れる」の違いがとても大切だと思っています。
巷では、「ピンピンコロリ」がいいといわれています。しかしこれは、医療の現場にいる人間から見ると、非現実的だといわざるを得ません。
上手く人生を終えるというのは「枯れていく」ということなんだと、私はこれまで私の患者として亡くなられた人たちをみて思います。
「健康寿命の延伸」といわれますが、「健康」であることが、いつまでも延び延びになることはありません。段々と枯れていくことが自然です。
このことは社会の持続性からも重要です。いわゆる「老衰」という病名で亡くなられた人の多い自治体ほど、高齢者1人あたりの医療費は低く抑えられているという事実もあります。
枯れていきながら、私たちは、生の尽きるまで、ずっと「幸せ」であるべきですし、そして「幸せ」がつきるときに死を迎えるべきです」。
人生100年時代を考える上で、とてもいい本です。
配信 Willmake143